縁 (26)
小学生の頃、夏の旅行を計画したことがあった。 図書館に、県ごとに名勝や物産を紹介しているシリーズ本があり、偶然手にとったのが和歌山県のものだった。当時は、まだ時代劇が多く放映されており、御三家の1つ紀州徳川家があった所ぐらいの知識で、和歌山県の事などほとんど何も知らない状態であった。 その本を見ていくと、どうやら蜜柑や梅が採れる所らしい、白崎という石灰岩でできた綺麗な岬があり、さらに南下すると、白浜という温泉地があり、白良浜という白砂の海岸と、円月島という少し変わった島があるらしいということがわかってきたわけである。そして自分は、その真ん中に絶妙のバランスでぽっかりと穴が開いた島に魅力を感じ、…